■■■情報バリアフリーフォーラム in にいがた 講演録 (2)■■■


5 パネルディスカッション
  「IT社会のリデザイン~ユニバーサルデザインの視点から~」
  内田斉さん(アライド・ブレインズ(株)代表取締役=コーディネータ)、ナミねぇ、硎谷さん、
  望月優さん((株)アメディア代表取締役)、多田憲孝さん(新潟工業短大助教授)


(1)望月さんからショートプレゼン ~情報化社会が視覚障害者に及ぼす影響ついて~
  文字を書く=80s半ばに視覚障害者用ワープロ普及。
  印刷物が読む=90s後半、スキャナの上に印刷物を置くと内容を読み上げるソフト開発。
  視覚障害者はこれで一応読み書きを突破。ただし、自分で実際に読み書きしている訳では
  ないので日本語は相変わらず異文化(外国語)のようなものである。
  インターネットは視覚障害者にとっても大変にプラス。文化革命といってもいいくらい。ネット
  バンキングなどITが使えれば文字の読み書きが問題でなくなる。ただ、視覚障害者はマイ
  ノリティなので「視覚障害者も使いやすいように」という配慮は多少置き去りになっている。
  そういうニーズを社会全体で取り組もうとしているのがユニバーサル社会なり、ユニバーサ
  ルデザイン。この哲学を実践していけば、始めからマイノリティが障壁の少ない状態からス
  タートできるという利点がある。
  最後に、ケータイの使い方について。WEBやメールは使ってない。例えば人の家に行くと
  き、地図を理解して行けばだいたいの所までは行けるが、残り5mの判断が難しい。ここで
  ケイタイで電話すればそこの人が出てきてくれるので、残り5mが解決される。シンプルだ
  けど決定的に助かる。

(2)多田さんからのショートプレゼン ~県内市町村のウェブアクセシビリティ調査~
  昨年度IT&ITS推進協議会ではウェブアクセシビリティについて、①セミナー開催で周知、
  ②改善講習会で具体策を示し、③西川町のホームページを実際に改善し、最後に④111
  市町村のウェブアクセシビリティ調査を実施した。④について、
  目的=現状を明らかにする。各関連機関の認識を改めてもらう。後者が大事だと思ってる。
  方法=改善支援システム「ウェブヘルパー」を使用。各サイトのトップページで調査。
  結果の次のとおり。
   70%以上の市町村が、トップページに画像や音声を使ってるふんだんに使っている。
   レベル2(少なくとも満たすべきレベル)を満足していない市町村が97%で大部分、
   レベルBはなくて、レベルAが3市町村(good!)。内容を分析すると、81%が画像に代替
   テキストがない、9%が画面点滅機能を使っている、これで9割を占める。ただ、逆にいう
   と少し改善するだけで約半数の市町村がアクセシビリティ確保できるレベルであるという
   こと。まずは認識を持ってほしい。
  その他
   ホームページは59%が職員作成、13%が業者委託。以外と職員が多い。
   アクセシビリティに関しては業者作成・職員作成でも差はない。業者は、アクセシビリティ
   確保のためのマニュアルを作成し、それをウリにしてほしい。市町村担当者は、発注の仕
   様に「アクセシビリティを確保すること」を入れて、それを運用管理してほしい。

(3)内田さんショートプレゼン ~総務省ウェブアクセシビリティ実証実験について~
  総務省は10年来研究をしている。つい先日ウェブアクセシビリティの支援システム(当初
  J-WAS,現「ウェブヘルパー」)を公表した。昨年度はアクセシビリティコンテストを実施した
  り、認識を高めるため周知(「みんなのWEB」)を続けている。全国自治体に調査をしたが、
  アクセシブルになってる1%、配慮している20%弱、これからの検討課題7割以上、という
  状態。まだまだの段階。経産省にウェブアクセシビリティに関するJISのガイドライン作成の
  動きがあり、これが大きなターニングポイントになるかも。

(4)セッション
内田Q  障害者にとってパソコンをはじめとするITは身体の一部のなっているという話だった
      が、実際に仕事する場合はどういう印象をお持ちか。
ナミねぇ まだまだすべての人が自由に使えないんだなぁという印象。
      アメリカとは哲学が違う。リハビリテーション法があるアメリカは「全ての人がウェブ
      にアクセスできなければいけない」からスタートしているが、日本だと「使えなくて困
      っている人がいるから少しづつでもいいから直していこう」というバリアフリーの考え
      方。使える人・作る人の意識に頼っている状態なので前途厳しい。国レベルで国の
      ポリシーとして「全ての人が情報を自由にやりとりできるようにすべし」とならなけれ
      ばいけない。また、アメリカには、望月さんと同じように、その障害を持った人自身が
      自分たちにとって必要なソフトウェアを開発するサードパーティ(?)がたくさんあり、全
      盲の人向けのソフトウェアがたくさんできてる。さらにアメリカでは公文書は電子デー
      タにしていなければいけないと法律で決まっている。日本ではまだなので、頑張ろう
      にも情報が公開されていないから頑張りようがない状態。
内田Q  先程の講演で静岡県の多面的な取組を紹介いただいたが、行政が事業展開できた
      ポイント、コツを伺いたい。
硎谷さん 例えばバリアフリーについて言えば、取り組んだ会社は信頼を得て製品も売れる。
      現実に恩恵を受ける人がいる。行政の役割は利益が見えないところに手を出して先
      鞭をつける。行政はそこで評価を受ければいい。需要喚起、先行投資。そう考えるこ
      とが大事。
内田Q  行政に求めることは何か?
望月さん (視覚障害者のIT利用支援製品の開発販売の)会社を始めた理由は、文字を読め
      なくて不便だったから。以前は行政に対して読書権(対面朗読サービス・テープ録音
      サービス)確保など要求をしていた。ただ、人に要求するには限界があること、要求
      するのと同じ気迫で自分が努力しなければいけないと感じた。行政に対しては具体
      的な細かいことではなく、硎谷さんが言ったように、社会の方向性を示し、その中に
      障害者が盛り込まれている。そういう強いメッセージを発信してくれればいいと思う。
ナミねぇ 日本では「官があって民がある。社会に必要なものは官がやってくれる。」と思って
      いる。「弱者」という言葉があるが、「弱者」をなくすのではなく、「弱者」に何をしてく
      れるんだ、という意識。本来はボタ餅が落ちてくるのを待つのではなく、ハシゴでも
      かけて自分で取りにいくべき。民というか、官でない当事者がそういう気概を持つべ
      き。望月さんが言われた「自分が何かを成し遂げるために動かなければだめだ」とい
      うことが官も含めて全ての人に求められている。
      ITについて言えば、間違えなくバリアフリーが進んだ。それはITの分野だけでなく、
      また障害者に対してだけではなく、全てが変わる可能性がある。つまり、地位や立
      場に関係なく公平に意見がやりとりできる道具だったりする。そういう社会になった。
      既存の関係性を組み替えてしまう道具があって、社会は変革しなければならない状
      況にある。あとは自分自身が変わろうと考えるかどうか、だと思う。
      まずは自分の置かれている状況を見つめ直すこと。それで初めで自分にできること、
      必要なものも見えてくる。みんなが火の玉小僧になる可能性があるのではないか。
内田Q  CCPの取組について、兵庫県と神戸市が組むことは従来の枠組みからは考えられ
      ないと思うが・・・
ナミねぇ みんなが悩んでいることを率直に出し合う。できることも出し合う。そうしてできたコラ
      ボレーションの1つがCCP。
内田Q  IT環境の変化を下地として、障害を持ってる方と行政、先生、色んな方との関係の
      変化につい て、どんな感じを受けているか?
多田   11年前に障害者のパソコン教室を始めたときは、施設職員がまだワープロを使って
      いる段階。話を進めるだけで大変だった。ブラインドタッチに近い状況ながら、震えが
      ある人やコミュニケーションが取れない人がでも3回目の授業くらいでメールで返事
      をくれたときのことは忘れられない。現実としてその施設では障害者の方が健常者
      よりパソコンを使い始めるのが早かった。
会場Q(チャレンジドの方)  
      パソコンは支給されているが、教えてくれる人がいなくて困ってる。昨年度県が障害
      者パソコン教室が開かれたが定員が少なかった。上中下越佐渡で開催してほしい。
      特殊機器の情報も紹介していただければ、それをもとに仕事ができると思う。今、作
      業所にいてホームページ作成をサポートを受けながらやってるが、教えてくれる人が
      いない。後継者育成も考えると人、場所、資金も足りないと思っている。
内田   サポーター不足に関しては問題意識があって、総務省の研究会でもメインテーマに
      なってる。施策が上滑りしない(地にしっかり足を付けた)ようにしなければならない。
ナミねぇ プロップはお金も何もないゼロの状態から死に物狂いで始めて、それで協力してくれ
      る人に協力してもらってここまで来た。既に作業所という場所があって、補助金も入
      っていると思うけど、その環境に慣れてしまってはいけない。
      プロップの場合は、最初に一流の講師を迎えた。一期生は5,6年勉強して後、教え
      る立場(先生)になっていて、今循環している。ご自身(質問者)もホームページ作成
      までできる訳で、必死やっていれば誰かがちゃんと見ていて、「私もできるはずだ」
      と付いてくる人もいる。今度はあなたが教えなければならない人がいると思う。
会場Q  障害者について生徒は本当に無知。触れ合う機会が絶対的に少ない。バリアフリー
      なネットワークを作って、障害者・高齢者とともにコミュニケーションを取っていきたい
      と考えているが・・・
ナミねぇ 障害者については、理屈や知識じゃなくて「慣れ」しかない。
      プロップでは教える側がチャレンジドなので「慣れ」に関しては百回ノーマライゼーシ
      ョンについて教えられるより一発で人間同士分かり合う。実際に学校教育に「情報」
      が入った時に「チャレンジドを非常勤で雇ってもらえないか」と取り組んだが、思った
      より学校教育の壁は厚い。頑張ってほしい。
硎谷さん まずネットワークで何をしたいのか、目標目的を定めた方がよい。1つの考えとして、
      みんなで考えを持ち寄ってどうしようかなぁというのがあって、それはそれでいいが、
      一番難しいのは「行司役」。意見が右往左往する場合が往々にしてある。ルール違
      反の意見も入ってくる。だからこそ、やはり目的目標を明確化しなければならない。
      次に、地域のボランティアと議論を深めて、そういう人たちに運営を任せるというやり
      方がある。なお、善意が踏み台にされる可能性もあるので、注意すべき面も多い。

(以上15分ほどオーバーして終了)


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