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平成16年11月15日

新潟県 電子自治体構築セミナー2004 講演録(2)

新潟県IT&ITS推進協議会 地域情報化委員会 

4.第三部 パネルディスカッション「電子自治体構築の加速化に向けて」

コーディネータ:松下哲夫 氏(日経産業消費研究所調査研究部長)
  パネリスト:須藤 修  氏(東京大学大学院情報学環教授)
       牧慎太郎 氏(総務省自治行政局自治政策課情報政策企画官) 
       三上喜貴 氏(長岡技術科学大学経営情報系教授)
       土田 茂  氏(新潟県総合政策部情報政策課長)
       品田正樹 氏(柏崎市総合企画部長)

松下コーディネータ 写真:松下さんパネルディスカッションのねらいは、電子自治体構築の目的と目指すべきところを明確にするということである。
基調講演、特別講演で基本的なところはお話しいただいたが、ここでは、何のための電子自治体か、住民にとってどんなメリットがあるのかについてもっと掘り下げたいと思う。
品田さん 写真:品田さん電子自治体化についての基本認識としては、地域の「特色」ではなく、自治体としての「義務」という認識である。
柏崎市の基本理念は「人が真ん中」。
市民の参加と協働に必要な要素として「情報の共有化」があり、その柱として「柏崎市e-コミュニティ構想」がある。
《※柏崎市のホームページ及び通信インフラ整備状況を紹介》
15年度から電算業務の完全アウトソーシング化を図った。
今後の課題としては、①原課主導のサービスコンテンツ提供②BPR(仕事のやり方の見直し)③経費削減、と捉えている。
土田さん 写真:土田さん新潟県のホームページアクセス数は年々伸びており、15年度は240万件(月平均20万件)で、16年度は8月までの月平均で34万件となっている。なお、このたびの地震災害情報へのアクセス件数を見ると、地震発生4日後の10月27日は1日で約26万件のアクセスがあった。
電子県庁の取組として、電子申請・届出手続の電子化を本年4月から96手続でスタートした。本年度中には130手続に公的個人認証のシステムを使い拡大を図る予定。調達手続の電子化については本年度システム開発を行い、来年度一部運用を開始したい。
電子申請・届出システムの利用状況は、11月までにID発行が171件、受付件数は57件と予想を下回ってはいるものの、年度末に多くの利用があるものと見込んでいる。但し、このシステムの県民への定着には、市町村で同様のシステムを稼働いただくことによって、より県民に身近なシステムとして受け入れていただけるものと考えている。
《※県内のIT化の状況及び県内市町村の電子自治体の取組を紹介》
昨年、県内市町村を対象に行ったアンケートでは、電子申請・届出の必要性を感じている市町村は65%、複数市町村での共同開発・共同運用について関心がある市町村は49%であった。
課題としては、市町村合併、財政難、人材難、市町村間の温度差などが挙げられる。
三上さん 写真:三上さん本年6月に調査した県内自治体のウェブページと情報公開の状況について紹介するので、議論の材料としていただきたいと思う。
《※ウェブページ公開情報の種類、ウェブページの更新頻度、情報公開条例制定年別自治体数及び情報公開の回答までの平均日数を紹介》
国連の電子政府の評価指標では、電子政府の進化の度合いを5つの指標で評価している。
①ネット上への登場
②提供情報の増加・更新の活発化
③様式のダウンロード、メールでの問い合わせ等双方向化
④税金、保険、手数料の支払い等個別事務処理のネット上での展開
⑤行政の垣根を越えた取組
県内の自治体は②と③に散らばっている状況にある。④の段階に行く壁に、個人の情報が確実に届けられる公的個人認証の適確な運用が挙げられる。
基盤は整った。これをどう活かすかが問われている。
また、今後はHuman Capital(人的基盤)として自治体職員のみならず自治体に働きかけようとする企業、住民に対しても電子政府・電子自治体に関する教育に努める必要があると思う。
牧さん 新潟県には自治体間での電子自治体に関する温度差を無くす努力をお願いしたい。
柏崎市は市民の目線に立ったホームページ作りをされているが、結果し個人情報をたくさん持つことになる。セキュリティの問題として、多くのID・パスワードを管理するよりも公的個人認証を活用いただきたいと思う。
須藤さん 個人情報保護とセキュリティ管理が重要であり、ここをしっかりしないと住民訴訟にも発展しかねない。公的個人認証は手続が多少面倒なところもあり、普及は難しいが、重要なものであるので、効果的な啓蒙活動が必要である。
松下コーディネータ 電子自治体構築に関する国の考えがまだ市町村に浸透していない面があると思われるが、今後の将来像をどのように捉え、どのように進めていくべきか。
品田さん 行政がIT化を進める理由としては次の二つであると考えている。
一つは、市民が主役になる行政運営。もう一つは、行政の効率化による経費削減で、これも行き着くところは市民にとってプラスになるものであり、当市ではこれを念頭に進めている。
また、当市のアウトソーシングの反省点から、留意すべき点をご紹介する。まず、業務のやり方、意思決定等の見直しを行った上で進めるべきであるということ。二つ目は、行政と業者との役割分担を明確にすること。三つ目は、地元産業の育成という効果も合わせ考えるということである。
土田さん IT化は部分的に進めてもなかなか効果が表れにくい。全庁的に、また総合的に進める必要がある。県では今後、総務・庶務業務のシステム化に取り組んでいきたいと考えている。
三上さん 住基カードを上手く活用していくことが課題。
また、この度の震災で感じたことだが、情報システムはどんな被災状況下にあっても活用できるライフラインであるべきだ。その頑丈さと分かりやすさを追求していくことが肝要であると考える。
牧さん 庶務業務などのバックオフィスのシステム化は大きなコストダウンにつな写真:牧さんと須藤さんがるものである。是非、この部分についても共同アウトソーシングでの対応を検討いただきたい。
住民サービス向上のための原資はITを活用してコストダウンする中から生み出していくという気持ちで取り組んでいただければ、財政当局の理解も得られやすいのではないか。
須藤さん 県内自治体の格差を解消し、基盤を統一して、その上で各個別の自治体の個性を打ち出す施策を推進すべきである。基盤の向上は単独では難しいが、共同でならそれが可能となる。頑張っていただきたい。
地域の方々の主体的な取組、産学官の連携が重要である。評価等については5年くらいのスパンで捉え、毎年の評価は余り気にすることなく、前向きに取り組んでいただきたい。
松下コーディネータ 電子自治体の効果を上げるためには、住民から電子自治体の利便性を認識してもらえるような働きかけが重要であると思う。
なかなか一朝一夕とはいかないもののようである。とにかく一歩一歩進んでいただきたいと思う。
今日のこのディスカッションが皆様にとってこれからの電子自治体を進めていく上でのご参考になれば幸いです。
どうもありがとうございました。
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会場Q 新潟県は面積が非常に広いことから、必ずしも全県一つにまとまらなくとも、上中下越など地域ごとにまとまって電子自治体の構築に取り組んではどうかと考えるが、いかがか。
牧さん 自治体の共同運用において、面積自体は余り影響ないものと思う。但し人口規模が余りにも巨大になると効果が低減してくるので、総務省としては各県に1か所か2か所程度で運営していただきたいと考えている。
実際に業務を突き合わせて、できる限り効率的な所に合わせるとした場合、途中で行き違いが起きないような、ある程度地域的なまとまりが保てるような枠組みが望ましい。
土田さん 県内各市町村においていろいろな条件の違いがあるようだ。今後、各市町村の皆さんと相談して方向性を検討したい。
須藤さん 他県でも地域の文化や経済・財政的な格差によって共同運営の構想が前へ進まない例があるが、動ける所から先に動いてもいいのではないかと思う。後でデータセンターをブロックごとに接続させるという考え方もある。
写真:パネラー全員
以上、予定時間を5分ほど経過して終了。
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