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ウェブアクセシビリティセミナー 結果報告
 地域におけるIT活用検討部会では、今年度の研究テーマに「ウェブアクセシビリティ」をとり上げており、今回は、部会の公開セミナーとして総務省のウェブアクセシビリティ実証実験事務局からもご協力いただき開催した。参加者の評価はたいへん高く、有意義なセミナーであった。
日 時 : 平成14年8月27日(火)13:30〜16:00
場 所 : 新潟ユニゾンプラザ 中研修室(新潟市上所 2-2-2)
セミナーの総合満足度のグラフ
第1部 基調講演「ウェブアクセシビリティ確保の重要性」 (60分)
基調講演写真1 基調講演写真2
講  師: 本宮 志江 氏
(株)日立製作所デザイン本部コミュニケーションデザイン部 兼  コーポレートデザインセンタ
 ユニバーサルデザイングループ)。◎日立製作所でウェブアクセシビリティを担当
<概要>
1.ユニバーサルデザインと社会背景
 日本の社会背景として、高齢者人口は年々増加し、2015年には4人に1人が高齢者になると予測されており、また身体障害者の数も年々増えているため、視覚情報に弱い人は、視覚障害者、色弱者、白内障の人を合わせると1000万人以上にものぼると言われている。そういう背景を踏まえて街中を見てみると、確かに様々な配慮はしているが、使いづらいものが多いというのが現状である。
 バリアフリーデザインがある特定の人対象に対応するものに対し、ユニバーサルデザインは、最大限可能な限り全ての人々にとって利用しやすいデザインということである。ユニバーサルデザインを追及する上で大切なことは、安全であること、アクセスしやすいこと、使いやすいことであり、何よりも安心感が得られることである。また、ユニバーサルデザインによる開発の考え方は、不特定多数を対象としたデザインをするのではなく、特定者のニーズを掴み、特定者の範囲を広げることである。
2.WEBによるユニバーサルデザイン
 WEBにおけるユニバーサルデザインとは、『障害者・高齢者を含む、できるだけ多くの人が情報にアクセスできるように配慮して設計されたアクセシブルなWEBページ』をデザインすることである。しかし現状は、画像・動画など視覚的な情報が必要以上に使われていたり、文字が小さかったり、略語や専門用語など難しい言葉がたくさん使われているものが多いのである。ここで海外(アメリカ)の動向を見てみよう。アメリカでは、WAI(Web Accessibility Initiative)とリハビリテーション法508条の2つが制定されている。WAIはアクセシブルなWebページを作成するためのガイドラインを3段階の優先度で構成されているし、またリハビリテーション法508条の方は政府のWebサイトや連邦政府が新たに購入する情報機器やソフトウェアについて、電子・情報技術アクセシビリティ基準を設けている。国内では、ガイドラインとして以下の3つを参考にご紹介する。
 ●「インターネットにおけるアクセシブルなウェブコンテンツの作成方法に関する指針」(首相官邸)
 ●「こころWeb](JEITA社団法人電子情報技術産業協会)
 ●「ユニバーサルデザインの考え方」(大阪府)等
 また、「情報バリアフリー標準化委員会」や、経済産業省の「情報処理機器アクセシビリティ指針」と総務省の「電気通信設備アクセシビリティ指針」を一体化させた日本のアクセシビリティ基準を国際基準と整合性をあわせた上でJIS規格へしようという動きがある。
<インターネット利用調査実験>
 実際に、障害のある方が日頃どのようにしてインターネットを利用しているかについて、日立製作所内で行った実験を紹介した。それぞれビデオでも紹介した。
◇弱視の方
 特別な装置は用いず、背景を黒にして、文字サイズを拡大、文字を白色と変更すると見やすくなる。
  [問題点]
   ・背景色が指定されており、変更できない。文字色のみ変わり読めない箇所がでてくる
   ・背景色とコントラストの弱い色の文字を読みにくい
   ・視野が狭く、部分的にしか見ることができないので全体を把握しにくい
◇全盲の方
 ディスプレイとマウスは使わず、キーボード(特にテンキー)とスピーカーを用い、音声読み上げソフトを使ってWebの情報を耳で聞いていた。読み上げソフトは画面の左上から順に読み、「Tab」「カーソル」キーを用い読み飛ばせる。またリンクのあるものは女性の声で読み上げる(通常は男性の声)。
  [問題点]
   ・画面内の情報について読み上げ順にしか内容を把握することができない。
   ・画像に<alt>の記述がないとその情報を得られない。
<Webユニバーサルデザインガイドライン>
 各ユーザ特性の特徴・WEB使用環境を考慮し、以下のようにデザイン要素を対応させている。
  ◆視覚障害 → 画像に対する代替テキストをつける
  ◆肢体障害 → リンクの下線をむやみに消さない
  ◆高齢者、知的障害 → 英語の乱用はせずわかりやすい表現とする。
<アクセシブルなWEB実現のためのポイント>
  @サイトをデザインとする上で基準とするガイドラインを決める。
  A作成後に再度アクセシビリティーをチェックする

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第2部 パネルディスカッション「ウェブアクセシビリティの現状と課題」(80分)
パネルディスカッション写真1 パネルディスカッション写真2
コーディネータ: 内田 斉 氏
(アライド・ブレインズ梶@代表取締役)◎総務省のウェブアクセシビリティ実証実験事務局。
パネリスト : 本宮 志江 氏
山口 治男 氏
(財)大阪市都市工学情報センター情報推進室情報推進課長 ◎大阪市役所のアクセシブルなホームページの推進役。
多田 憲孝 氏
新潟工業短期大学生産システム工学科助教授 ◎当部会代表。昨年度、県内市町村のウェブアクセシビリティ調査を実施。
<概要>
パネリストの自己紹介
多田 憲孝 氏
 平成14年1月29日〜2月22日に行った「新潟県内市町村施設の情報バリアフリー化に関するアンケート調査」の概要について見てみると、各種障害に対する支援状態では、下肢障害の方(車椅子の方)に対して実施しているところは多いが、視覚障害、上肢障害の方に対する支援はほとんどやっていないのが現状であった。また、情報バリアフリーの環境を整える規定を設けているところもほとんどなかった。その中で、「新潟県内市町村の公式ホームページのアクセシビリティ調査」を行ったので、その結果も紹介した。WAI(Web Accessibility Initiative)の基準で判断できる、J-WASを使って点検を行った。しかし、ほとんどのホームページが満足いくアクセシビリティは提供していなかった。現在はアクセシビリティが上がってきている市町村も増えてきた。高齢者・身障者は情報通信に対する潜在的ニーズは高いので、自治体側としても、情報を必要とする全ての住民に同質の情報を提供できるようにしていただきたい。
山口 治男 氏
 大阪市のホームページ制作について気を付けた点を順に説明した。まず、「バリアフリー」から「ユニバーサルデザイン」へということで、全ての人に使いやすいデザインを考えた。ロナルド・メイスさんが提唱したユニバーサルデザインは、障害の有無、年齢等に関わらず多様な人々が気持ちよく使えるようにあらかじめデザインすることである。それを根底に大阪市ウェブ制作の方針を決めて、実際にはウェブユーザビリティ10原則(Ver1.0)を制定し、それに基づいて作成した。内容は以下のとおりである。
  1.スプラッシュページは、原則使わない。
  2.フレームの使用は、できるだけさける。
  3.Java Script、Flashの使用はできるだけ避ける。
  4.ユーザ側の視点に立ったナビゲーションを配置する。→サイト構造は原則3階層までにする等
  5.検索機能とわかりやすい<title>タグを実装する。
  6.文章のライティングに留意する。
  7.文字サイズを指定する場合は、相対的なサイズを指定する。
  8.代表的な音声読み上げソフトでのチェックや、白内障疑似体験ゴーグルでの色彩チェックをする。
  9.ディスプレイ・通信環境に配慮したページ作りをする。
  10.HTMLとスタイルシートを正しく適切に使用する。
アクセシビリティの向上についてはウェブ・アクセシビリティ・イニシアティブのアクセシビリティガイドラインを参考にし、J-WASによりアクセシビリティの点検も行った。2002年2月にリニューアルしたが、秋にもリニューアルを予定しており、その際にはユーザビリティテストを導入したり、外国語ページもリニューアルする予定である。また、ホームページをリニューアルしてからアクセス数は確実に伸びている。大阪市のホームページを実際に見てもらいたい。コンテンツの見せ方は総務局、検索に工夫をしたのは健康福祉局なので、それぞれ参考にしていただきたい。ユニバーサルデザインはWebだけではなく、全ての都市計画に関わることだと思うので、自治体の方には是非参考にしていただき、様々な部分で適用していただきたい。

<パネルディスカッション>(主な意見を掲載)
Q ウェブアクセシビリティ、ユーザビリティとは実際にどういうものか。
A 弱視や全盲の方々のような実際のユーザとなる方に見てもらったり、体験してもらうと分かりやすいと思う。
A 今日はユニゾンプラザ1階にある、福祉機器を展示しているところから、白内障疑似体験ゴーグルを借りてきたので、実際にどのくらい見えるのか体験していただきたい。ほとんどぼやけて見えないと思う。そのように、実際にどう見えるかが分かってくると理解しやすいと思う。
Q ウェブアクセシビリティやユニバーサルデザインを適用する上で必要なことは何か。
A ユニバーサルデザインを適用する場合には、その組織にあったガイドラインを作ることが絶対に必要だと思う。弊社の場合は、ホームページを作る際の注意事項やベースとなるものをイントラネット上におき、それを強制ではないが参考にしてもらうようにしている。ガイドラインについては、政府等からもいろいろ出ているので参考にしていただきたい。
A 大阪市の場合は、ホームページの約90%ぐらいを私どもで担当させていただいているので、ユニバーサルデザインを適用するのはやりやすい。また、先程ご紹介したウェブユーザビリティ10原則を作り、ガイドラインとしている。これはVer1.0となっているように、これからもどんどんアップデートしていく予定である。このようにガイドラインとなるものは是非必要だと思う。
Q ユニバーサルデザインを普及させるにはどうしたらいいか。
A ユニバーサルデザインを考えるときには、広く組織内の意識改革が必要である。特に自治体はホームページだけではなく、様々な施設等にも適用するべきものなので、できるだけ多くの方がユニバーサルデザインについて知って欲しいし、知る必要があると思う。
Q 障害者や高齢者に対して今後はどのような状況になってくると思うか。
A 障害者の方は支援団体があるので、インターネットを見る時のサポートはかなりできていると思われる。しかし、高齢者の方への対応はまだまだ遅れていると思う。今後電子自治体が進んでいくと、高齢者の方へのサポートをきちんとしていかないと、必要な書類さえも満足に取得できないような状況になってくると思う。
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