■■■情報バリアフリーフォーラム in にいがた 講演録(1)■■■





1.主催者代表挨拶(県総合政策部長・西埜孝樹)

 県では昨年度職員がユニバーサルデザインについて研究したが、その中で、ユニバーサル
 デザインを「人それぞれが持つ多様性を認め合い、全ての人が自律した社会生活が送れる
 よう、他人への思いやりを実際の行動として形にしていくこと」とまとめた。 「他人への思い
 やり」とは、「同情」というこということではなく「想像力をもって思いを馳せる」ということ。
 県の施策「緑100年物語県民運動」も、100年後の世代への「思いやり」という点で同じ。



2.基調講演「ITが拓くユニバーサル社会」
   "ナミねぇ"こと竹中ナミさん(プロップステーション理事長)


 重症心身障害をもつ娘の母ちゃん。30年前に彼女を授かった時に、次の2つのことを決心。
  1 彼女と生きることが辛いことではない、マイナスではないことを証明すること。
  2 幸せや不幸は自分自身が決めるということ。
 その実現のため、色々な障害を持つ人と接した。これが活動の原点。
 彼らが自由に動けたら何がしたいか、動くためには周りがどうなって、道具は何が必要なの
 かということを一緒に考えた。91年に立ち上げた「プロップステーション」は、ラグビー用語で
 「支え合い、支柱」という意味をもつ「プロップ」から名付けたもの。

 チャレンジドにとって、コンピュータは、社会とつながる、コミュニケーションを取る、自分で情
 報を得る、自分の出来ることを世の中に示すといった、チャレンジドにとっては五感の代わり
 となるもの。
 一般家庭にコンピュータはほとんど普及いなかった頃に行ったアンケート調査では、全国の
 重度障害者の8割が「働きたい。その際コンピュータが武器になる。」と回答してきた。また、
 実際に働くためには、本人の働きたい意思、周囲の講演のほかに
  ①勉強する場を設け、
  ②プロとして認定する仕組みを作り、
  ③仕事があって、
  ④その仕事を在宅でできるようになること
 が必要で、それが実現すれば彼らが優秀な働き手に、社会を支える一員になるということが
 わかった。プロップではたくさんのバックアップがあってそのことを取り組んできた。

 ただ、日本の福祉は、「まず先にマイナスのところを見て、そこに手を差しのべてあげること」
 になっている。これを180度変え、出来ないところやマイナスのところを数えて埋める福祉で
 はなく、その人の中にある力を認めて全部引き出すという福祉観でなければならない。
 日本は、まだまだ障害者は障害者の世界で頑張るというのが現状。アメリカではワシントン
 大学のチャレンジドの割合が7%を占め、他の大学でも3%はいる。これを現在10%に伸ば
 そうとしている。日本0.09%、チャレンジドが社会を構成する一員となれないことの象徴。
 友達に障害者の親がいっぱいいるが、「この子より1日あとに死にたい」という人がいっぱい
 いる。安心して死ねないということ。これは非常に残念なことだが、そのことに気づいた人間、
 感じてしまった人間、当事者である私たちが、色んな分野の想像力を持つ人たちと手をつな
 いで日本を変えていこうという行動を起こさないといけないと思っている。
 スウェーデンという福祉国家も僅か100年前は非常に貧しくて、障害者・高齢者を殺戮して
 いた。国の仕組み、税金の仕組み、生き方の仕組み・・・血と汗を流して全部見直して、今世
 界一の福祉国家といわれる、最重度のチャレンジドも仕事をし、税金を払う国になった。

 バリアフリーは、ここが障壁になっているから、困っているからそれを除けようということ。
 ユニバーサルデザインは一歩進んで全ての人が力を発揮できるようにしようということ。
 つまり、どんな場所でも一緒に勉強して仕事をして社会生活をして、一緒に楽しいことができ
 るのか、という視点でもう一度考え直して、社会を構成する一人として誇りある国民・県民・市
 民としていれるようにしようという目標がユニバーサル社会。

 <最後にビデオ放映>
 CCP(CharengedCreativeProject)という新しいプロジェクトについて。
 授産所等で作られている製品を流通のプロの眼で見つめ直す。カタログ通販のフェリシモを
 通じて日本中に広げようという活動。兵庫県、神戸市も協働。



3.出展企業からのプレゼンテーション

 ・(有)アイティーエス
 ・(株)アットイーズKGS(株)
 ・(株)アメディア
 ・アライド・ブレインズ(株)
 ・(株)NTTドコモ新潟支店
 ・日本IBM(株)(株)丸新システムズ
 ・(有)ミクロウイング
  (現在ホームページないとのことなので事務局補足)
  住所:新潟県中蒲原郡村松町大字石曽根2378
  障害者の僅かな動きもキャッチするたくさんのセンサーなどを展示していただきました。
  小さなものは米粒程度のものからありました。実際の製品を作るときは、相手の障害
  状態に合わせるため完全オーダーメイドらしく、とても大変とのことでした。



4.特別講演「IT社会と障害者・高齢者~ユビキタスネットワーク社会を目指して~」
   硎谷明正さん(静岡県企画部総合計画室長)


(1)静岡県の情報化の取組
◎行政の生産性の向上(行政改革)
 平成11年7月に1人1台化。7000台のネットワーク組んだ。
 現在1000種類のデータベース。給与明細も電子処理、電子決済導入済み。例えば時間外
 勤務の決裁、アンケート調査の集計も素早くできる。総務事務を一元管理し人員も削減。
◎県民サービスの向上(こっちが肝心)
 「いつでもどこでも誰でも」のユビキタス社会が究極の目的。
 まず、申請書の電子提供などの一般的に言われるメニューのは当たり前。知事の交際費や
 政策過程の状況も積極的に情報開示。NPO等との協働も積極的に。
 なお、東海道新幹線や東名高速に光ファイバ通っており、またADSLのNTT回線カバー率が
 98%(今年4月)と恵まれた状況にあったので、インフラを整備するより、それをどう利用する
 か、有用なアプリケーションやシステムは何かが検討対象だった。 
 〔取組の例〕
 ・ホームページ制作・公開に関して、ユニバーサルデザインガイドライン(一定の基準を設け
  て最低でもこれは守るという決まり)を作成し、全庁に展開。
 ・平成12年度にモバイル対応ホームページを全国に先駆けて作成。4カ国語対応。
  地図案内は簡単なGISも使用。情報の更新はNPOや市民団体と連携。月10万アクセス。
 ・申請書類の電子提供(平成12年~)は現在1100種類。
 ・情報公開としては、記者提供資料をネット上に保管・公開。記事になるならないは別にして
  このページを見れば県の動きが一目瞭然。特に玄人筋に評判よし。
 ・公共端末は県下28ヶ所に100台配備(平成12年度地域イントラ補助事業で整備)。
 ・障害者マルチメディアセンター県内3ヶ所(浜松・静岡・沼津)でネット利用や講座の開催。
 ・雇用交付金を利用してインターネットアドバイザー10名を公共端末にある県内公共施設に
  配置。2年間で3万6千人のアドバイザー利用があった。
 ・IT講習は、15万人目標に対して22万人が応募。高齢者の参加が多く、ITに対するモチベ
  ーションの高さを感じる。カナ入力も一部実施した。
 ・ホームページグランプリには、ユニバーサルデザイン部門132件を含め1800件の応募あ
  り。今年はモバイル部門も設置。行政が県民のリテラシー向上の場を提供している一例。
 ・静岡県モバイルIT推進会議を立ち上げケイタイ事業者、市民団体等をメンバーに施策を検
  討(事務局券情報政策室)。ケイタイメールの講習やFOMAの動画機能を使った視覚障害
  者サポートの事業をNPOの支援を受けて実施。
 ・地図活用地域情報プラットホームのシステムを情報政策室が作成し、NPO等に提供。
  運用(情報更新)はIDを交付されたNPOやボランティア団体。通学の危険箇所やバリアフ
  リー施設、オススメレストランなどを登録。地域のコミュニケーションへの貢献を期待。
 ・ユビキタスネットワーク社会システム研究会を立ち上げ。技術を学ぶのではなく、使い方や
  活かし方を研究。
   ↓
 「インフラからアプリケーションへ。この次はコミュニケーション。」
 IT、ユニバーサルデザインの概念が生きるのは防災・福祉・観光。行政が時代の半歩前を
 研究し、それに触発された団体が参加することで、コミュニティの形成につながっていく。
 われわれがやっておかなければならないのは、その時のために色々な人から意見を聞いて、
 知恵を出し合って、先取りして、モデル事業に手を挙げる、国に提案すること。

(2)電子自治体をどのように捉えるか
 電子自治体では「速くて安くていいサービス」を提供しなければならない。顧客志向型。
 目指す社会は、ユビキタスネットワーク社会の実現。これが電子自治体の究極の姿。
 具現化されたものの一部が電子入札であり電子申請であり情報公開。

(3)施策を具体化する際のポイント
 1 火の玉になってやる人がいるかどうか。「三人寄れば文殊の知恵」ではなく、意欲ある人
   がいなければいけない。特に時代の先を行く分野では。
 2 「やらない理由を探す」ことはやめる。やってダメならやめればいい。
   ITの分野は全分野との調整があるから大変だが、逆に全施策を引っ張ることもできる。
 3 異分野から学ぶ。いいアイディアが得られる。自分の分野をしっかりやるのは当然。


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