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子自治体の取り組み状況と課題に関する調査
概要と調査結果速報

1.調査概要
(1)調査目的

      1990年代に入ってから著しい発展を遂げた情報ネットワーク化により地方自治体の地域情報化施策の様相も変化し、庁内情報化の推進や情報インフラの整備から、インターネットによる住民向けの情報提供と幅広い施策の充実が図られている。おりしもミレニアムプロジェクトとして国レベルで<電子政府の実現>が打ち出され、国と住民の接点である地方自治体の役割は非常に大きなものとなっている。
 このような背景のもとに地方自治体では急速に組織の再編あるいは地域情報化施策の策定などが進められているところであるが、「電子自治体」という言葉だけが一人歩きし、「住民サービスが向上する、利便性が高まる」という情報活用方策について議論されていないのが現実である。業務の効率化、高度化、ネットワーク化のみを重要視していては、ともすれば住民の生活に役立つ情報化はおざなりになる可能性がある。
 電子メール一つとってみても、地方自治体の取扱いは公文書と同等となるかどうか、あるいは決裁の方法など組織内での議論が十分になされておらず、住民に開かれていないのが現状である。住民側のITへの関心が高まり、インターネットが爆発的に普及するなか、地方自治体にとっては住民とのコミュニケーションを深めるツールとして活用できていない。
地方自治体は「電子自治体」の実現を目指すことによって、組織、財政、制度をさまざまな角度で見直すことが余儀無くされ、実務的な課題が山積しているのは言うまでもない。さらには時代の要請である情報公開にも応え、市町村合併や広域連携を視野に入れることは今後の行政運営には避けては通れない。これらの課題を整理することと、住民の生活に役立つ「電子自治体」について議論することは車輪の両輪であり、バランスを取ることが重要である。
 当部会では、このような問題意識のもと、県内市町村の電子自治体への取り組み状況の実態調査を行う。この結果から地方自治体が抱える課題や推進の方向を把握するなかで、さらには住民ニーズを分析する。これらの調査、検討をもとに電子自治体の概念を明確にしていくことを目的とする。

(2)調査対象
   自治体アンケート調査:新潟県下の全市町村(20市91町村)
自治体ヒアリング調査:アンケート調査の結果から独自の取り組みを行う自治体を事例として取り上げる
               (5市町村程度)。
住民ニーズ聞き取り調査:アンケート調査およびヒアリング調査を踏まえ、住民の電子自治体に関する
                 具体的ニーズについて聞き取り調査を行う。

(3)調査日程
   自治体アンケート調査:平成13年11月〜平成13年12月
自治体ヒアリング調査:平成14年2月〜平成14年3月
住民ニーズ聞き取り調査:平成14年3月24日

(4)自治体アンケート調査方法
   電子メール及び郵送による配布、返信用封筒もしくはFAXによる回収

(5)自治体アンケート回収状況
   有効回答数:93市町村
回  収  率:83.8%

(6)自治体アンケート調査項目
◆地域情報化施策の概要
  Q1.地域情報化計画の策定状況
  Q2.住民ニーズ調査の実施の有無
  Q3.ホームページの位置づけ
◆ITインフラの整備状況
  Q4.庁内のパソコン整備状況 
  Q5.庁内LANの整備状況
  Q6.パソコンのネットワーク化
  Q7.電子メールの活用状況
  Q8.電子文書に係る文書管理基準の有無
◆電子自治体としての行政サービス
  Q9.関心の高い行政サービス
  Q10.2003年度末までに予定している
     行政サービス

◆電子自治体の推進体制
  Q11.現在の情報化推進体制
  Q12.電子自治体に向けた組織的対応
  Q13.電子自治体としての施策の進め方
      (財政的な裏付け)
  Q14.職員の研修体制
◆電子自治体の推進課題
  Q15.広域連携についての検討
  Q16.学術機関や民間企業との連携について
      の検討
  Q17.電子自治体を推進する上での障害
  Q18.電子自治体により期待される付帯効果
  Q19.アウトソーシングについての考え方
  Q20.電子自治体を推進する上での課題、
      問題点 (自由回答)
2.調査結果速報
(1)単純集計結果−詳細は別紙(調査票)参照
Q1.地域情報化計画は、約8%が策定済み、約11%が策定中で、未策定が8割を超える。
Q2.行政サービスに対するニーズ把握は、把握しているのは約16%、計画中は約9%。
Q3.ホームページについては、「情報発信メディア」との位置づけが約55%と最も多く、「電子自治体実現
   に向けた行政窓口の基盤」との位置づけは3分の1程度。
Q4.庁内パソコンの整備状況は、約半数が「おおむね一人一台」を達成している。
Q5.本庁と出先機関とのネットワーク化は、約45%が整備済みである。
Q6.庁内のパソコンのネットワーク化については約45%が「全てのパソコンがネットワーク化されている」。
Q7.電子メールの活用状況は、「各職員がメールアドレスを持ち外部とやりとりしている」のは約27%を占める。
Q8.電子文書に係る文書管理基準は9割近くが「無し」。文書管理基準を設けているのは5%。
Q9.関心の高い行政サービスについては「電子申請(75.3%)」「統一窓口サービス(39.8%)」「ICカード利用に
   よる福祉・保健・医療の連携(34.4%)」の順に高い。
Q10.2003年度末までに予定している行政サービスについては、「住民IT研修(26.9%)」「公共端末(21.5%)」
    「電子申請(18.3%)」の順に高い。約4割が無回答(未定、該当なしも含む)。
Q11.現在の情報化推進体制については、6割以上が「兼務しながら」の体制となっており、「専門の部署
    で推進」は約2割。
Q12.電子自治体に向けた組織的対応については、「現在検討中」が約半数を占める。
Q13.電子自治体としての施策の進め方(財政的な裏付け)については、9割近くが「国の補助に期待して
    いる」。
Q14.職員の研修体制については、「計画的な職員研修は実施していない」が7割近くを占める。
Q15.広域連携についての検討については、8割以上が未検討の段階である。
Q16.学術機関や民間企業との連携についての検討については、9割以上が未検討の段階である
Q17.電子自治体を推進する上での障害については、「予算の確保(87.1%)」「庁内体制の整備(57.0%)」
    が上位を占める。
Q18.電子自治体により期待される付帯効果については、「広域サービスの促進」が約7割を占める。
Q19.アウトソーシングについての考え方については、「当面考えていない(今後の検討課題)」が約半数
    を占める。
Q20.電子自治体を推進する上での課題、問題点を自由記入形式でたずねたところ15団体から意見を得
    られた。

(2)4つの指標による分析
本アンケート調査を、さらに詳細に分析するために、地方自治体の人口規模、地域情報施策の取り組みや
電子自治体に対する積極度などを指標化し、それぞれの関係を探る。

@ 4つの指標の設定
情報化体制
まず、自治体の地域情報化施策の取り組み状況を把握する指標として<情報化体制>を設定する。これら
は「地域情報化計画の策定」「住民ニーズの把握」「電子文書の管理基準」「情報化推進体制」について、取
り組みが多いほど点数が高くなるもので、『電子自治体』という国の構想が示される以前からの地域情報化
に対する関心度が反映されるものである。
インフラ整備
庁内情報化の進行状況を把握する指標として<インフラ整備>を設定する。「庁内のパソコン整備」、「出先
機関とのネットワーク整備」「パソコンのネットワーク化」について、整備が進んでいるほど点数が高くなる。単
純集計から約半数の自治体が『一人一台体制』を実現していることが分かったが、ネットワーク化も含めたイ
ンフラ整備が進んでいる自治体の意識(<情報化体制>や<電子自治体積極度>)は相関関係があるか否
かは非常に重要な視点である。
電子自治体積極度 
電子自治体に対する関心度と目標設定の状況を把握する指標として<電子自治体積極度>を設定する。
「ホームページの位置付け」「電子自治体として関心のある行政サービス数」「2003年末までの予定」「電子
自治体に向けた組織的対応」について、関心が高く、取り組みが多いほど点数が高くなる。この指標は本ア
ンケート調査で最も重要なものであり、分析の軸とするため積極度の大中小の3つのグループに分けている。
この指標の高低を裏づける背景を探ることが本調査の目標の一つである。
広域関心度
電子自治体推進における広域連携について、関心度と取り組みの状況を把握する指標として<広域関心
度>を設定する。「広域連携の検討」「電子自治体の付帯効果における広域サービス・市町村合併への期
待」「アウトソーシングの共同利用の希望」について、関心が高く、取り組みが多いほど点数が高くなる。

4つの指標に加え、地方自治体の組織規模、財政力の目安として「人口クラス」を設定し、市と町村のそれ
ぞれについて人口の区分によりサンプルを6グループに分類する。

A 分析結果
人口クラス別の平均値
4つの指標を人口規模別にクロス集計した結果、自治体の人口規模と情報化に対する取り組みや事業の
進行は関係が深いことが示された。<情報化体制><インフラ整備><電子自治体積極度>の3つの指
標は、自治体の人口規模が大きいほど平均値が大きくなる傾向がある。つまり、人口規模が大きな自治体
ほど、地域情報化への取り組みと庁内のインフラ整備が進み、電子自治体に対しても積極的な態度が示さ
れているということである。<広域関心度>のみは人口規模が大きい自治体は平均値が低くなっており、人
口5千人以上1万人未満の町村ではもっとも平均値が高くなっている。
また、4つの指標の「最大値」を見ると、<インフラ整備>ではどの人口規模でも最大値(30ポイント)のサン
プルが含まれており、全体の傾向(平均値)は人口規模に比例しているものの、<インフラ整備>に重点を
置いている町村は見受けられる。

表1 人口クラス別の平均値
情報化体制 インフラ整備 電子自治体
積極度
広域関心度
平均 最大 平均 最大 平均 最大 平均 最大
A(10万人以上市)(n=3) 28.3 35 28.3 30 83.3 135 6.7 10
B(5万人以上10万人未満市)(n=4) 21.3 30 20.3 30 85.0 110 12.0 15
C(5万人未満市)(n=11) 15.5 25 20.0 30 42.3 85 11.8 30
D(1万人以上町村)(n=24) 8.1 20 18.8 30 29.6 75 11.9 30
E(5千人以上1万人未満町村)(n=31) 7.3 25 18.8 30 26.8 55 14.4 35
F(5千人未満町村)(n=20) 5.5 15 15.7 30 19.0 45 12.5 25
全体(N=93) 9.4    18.6    32.0    12.7   

電子自治体を推進する上での障害
電子自治体を推進する上での障害は、全体の結果では圧倒的に「予算の確保」に回答が集中しているが、
自治体の取り組み状況や意欲による違いを把握するためにクロス集計を行った。
下表に示すように、人口規模にかかわらず「予算の確保」は8割を超え、大きな市部から小さな町村まで
共通した悩みであることがわかる。
また、電子自治体の積極度別に見てもどのグループでも「予算の確保」は8割を超えている。積極度大の
グループでは「職員の情報活用能力(46.9%)」が2位に挙げられており、組織全体の底上げが問題となっ
ていることがわかる。積極度中、小のグループでは「庁内体制の整備」が6割を超え、組織内での責任の
所在が明確化されていないことが障害になっていることがわかる。これらのことから、「やりたいことがある
から予算が足りない」「予算が足りないからやりたいことがわからない」という二つのジレンマが浮き彫りと
なっている。

表2 「電子自治体を推進する上での障害」との関係

Q17-1 Q17-2 Q17-3 Q17-4 Q17-5 Q17-6 Q17-7 Q17-8 Q17-9
予算の確保 庁内体制の整
庁内イン
フラ未整
住民ニーズとの
かい離
ノウハウ
不足
職員の
情報活
用能力
トップの
理解不足
外注業
その他
全体
(N=93)
81 53 20 33 36 36 7 2 4
87.1% 57.0% 21.5% 35.5% 38.7% 38.7% 7.5% 2.2% 4.3%
A(10万人以上市)
(n=3)
3 1 0 0 0 2 1 0 1
100.0% 33.3% 0.0% 0.0% 0.0% 66.7% 33.3% 0.0% 33.3%
B(10万人未満5万
人以上市)(n=4)
4 2 1 0 2 1 1 0 1
100.0% 50.0% 25.0% 0.0% 50.0% 25.0% 25.0% 0.0% 25.0%
C(5万人未満市)
(n=11)
10 6 4 9 2 2 0 0 0
90.9% 54.5% 36.4% 81.8% 18.2% 18.2% 0.0% 0.0% 0.0%
D(1万人以上
町村)(n=24)
20 12 6 8 11 11 1 0 2
83.3% 50.0% 25.0% 33.3% 45.8% 45.8% 4.2% 0.0% 8.3%
E(1万人未満5千人以上町村)(n=31) 26 20 6 9 13 14 1 0 0
83.9% 64.5% 19.4% 29.0% 41.9% 45.2% 3.2% 0.0% 0.0%
F(5千人未満町村)
(n=20)
18 12 3 7 8 6 2 2 0
90.0% 60.0% 15.0% 35.0% 40.0% 30.0% 10.0% 10.0% 0.0%
積極度大(n=32) 28 14 9 11 8 15 5 0 2
87.5% 43.8% 28.1% 34.4% 25.0% 46.9% 15.6% 0.0% 6.3%
積極度中(n=26) 22 18 2 10 16 7 0 1 1
84.6% 69.2% 7.7% 38.5% 61.5% 26.9% 0.0% 3.8% 3.8%
積極度小(n=35) 31 21 9 12 12 14 2 1 1
88.6% 60.0% 25.7% 34.3% 34.3% 40.0% 5.7% 2.9% 2.9%




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